抗ストレス・向精神作用に関する文献集

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マウスまたはラットを用いた動物実験

1.薬用人参の成分に関する行動薬理学的研究

〈愛媛大学医学部 薬理学 吉村裕之 No.4,29〉
  1. 雄および雌マウスの攻撃行動に対する作用

    単離サポニンの効果を比較検討。雄の攻撃行動はRb1(2.5~10mg/kg)の投与により有意に抑制されたが、Rg1(2.5~10mg/kg)を投与した場合は、攻撃性の増加が認められた。雌の母性攻撃に対する急性効果はRb1(2.5,5mg/kg)が抑制作用を示し、Rg1(2.5,5mg/kg)には有意な効果が認められなかった。妊娠期から分娩3日目までRb1(1.25と2.5mg/kg)を連日投与した群では母性攻撃は対照群に比較して有意に低下したが、Rg1の場合は攻撃性が増加した。

  2. ストレス潰瘍の発生および治癒過程に対する作用

    粗サポニン(25と50mg/kg)はラットのストレス潰瘍の発生を用量依存的に抑制し、胃粘膜損傷の治癒促進効果が認められた。

2.薬用人参の向精神作用について

(愛媛大学医学部 薬理学 吉村裕之 No.5,28)
研究の総括と今後の展望
  1. 居住者と侵入者の設定による雄ラットの敵対行動: 粗サポニンとRb1は抑制効果が著効。Rg1は無効。
  2. 妊娠期を単独で過ごした雌親の母性攻撃: 粗サポニンとRb1は抑制効果が著効。Rg1は無効。
  3. 離乳直後から隔離飼育した場合に惹起される雄の性行動障害: 粗サポニンとRg1は改善効果有り。Rb1は無効。

3.摂食行動からみた紅参の抗ストレス作用

(九州大学医学部 第1内科 坂田利家 No.5,29)

ストレスとして高温環境とTail-pinchを用い、ラットの第Ⅲ脳室内への人参サポニン持続注入あるいは紅参の長期経口投与により、これらのストレスによって引き起こされた摂食の異常亢進ないしは抑制が軽減され、人参サポニンには優れた抗ストレス作用のあることが確認された。

4.薬用人参の向精神薬としての位置づけと作用機序

〈愛媛大学医学部 薬理学 吉村裕之 No.7,59〉

薬用人参の向精神作用は既存の向精神薬と比べ、どのような位置づけになるかを検討した。Rb1は雄、または雌マウスの攻撃性を用量依存的に有意に抑制した。この作用は運動機能や自発行動に影響を及ぼさない用量範囲で発現し、この点が抗精神病薬や抗鬱薬と異なる。

被攻撃側動物にベンゾジアゼピンおよび非ベンゾジアゼピン系抗不安薬を処置した場合に雄マウスの攻撃性が増強されるのに対し、Rb1にはこのような作用はなく、また5-HT1Aレセプター関連薬物もRb1と同様の結果であった。従って、Rb1と5-HT1A関連薬物は類似した作用機序と推察されるがさらに詳細な検討が必要である。

5.行動、体重、体温変動から見たジンセノサイドRg1の温度ストレスに対する拮抗作用

〈九州大学医学部 第一内科 坂田利家 No.7,61〉

Rg1をラット第3脳室に連続的に注入し(Rg1 0.4mM 速度1.0μl/時)、環境温度を21℃から31℃に上昇した場合の状態を観察。対照群では摂食量の減少、水分摂取量の増加、探索行動の減少、体重の減少がみられたが、Rg1群では昇温による影響を受けず、昇温前値のままであった。直腸温では両群において有意差は無く、昇温前の体温を維持していた。このことはRg1が昇温ストレスに対し、拮抗的に作用したことを示す。

6.紅参の向精神作用

〈愛媛大学医学部付属実験実習機器センター 吉村裕之  No.9,3〉
雄マウスの敵対行動を指標として

粗サポニン、Rb1、Rg1と各種向精神薬を比較。すなわち雌雄マウスを5週間飼育したケージに雄のみで飼育したマウスを侵入させ、行動を観察。居住マウスは攻撃側で侵入マウスは被攻撃側となる。以下の表で結果を示す。

7.紅参の抗ストレス作用と脳内ヒスタミン

〈大分医科大学第一内科 坂田利家 No.12,65〉

紅参の抗ストレス作用を要約すると、1)Rb1のように神経活動や摂食行動を直接調節する成分が含まれていること、2)摂食調節への直接作用は無いが、生体への有害刺激に対し、Rg1のように緩衝作用がある。この緩衝作用は手術侵襲や高温環境といった体性感覚に関するストレス情報だけでなく、ガン毒素のような体液性情報に対しても有効である。 これらのストレス情報は視床下部を主座にする神経回路網で統合処理され、生体の恒常性維持のため、行動調節系や代謝調節系へと反映されていく。視床下部に存在するヒスタミン作動神経系はこの情報処理過程での伝達系において主要な役割を果たしている。

本報告では、紅参中の酸性多糖類はRg1とよく似た作用を示すことが分かった。視床下部ヒスタミンは高温環境下での適応行動や体温の恒常性維持に重要な機能を担っていることがわかる。ヒスタミン合成酵素阻害薬を作用させると、ヒスタミンの枯渇によって、摂食量の減少や飲水量の増加反応が減弱し、体温の恒常性が失われる。Rg1投与群の体温は維持されていたことから、Rg1の作用特性は視床下部ヒスタミン系へのストレス情報を入力前のレベルで遮断することにある(ストレス情報が入力されればヒスタミンが出なくなる)。

8.心理的ストレス潰瘍に対する紅参の作用

〈愛媛大学 吉村裕之 No.13,35〉

コミュニケーションボックス法と内視鏡観察法を組合せて、紅参の抗潰瘍作用について調べた。身体的ストレス負荷群は条件刺激提示後に電撃を受ける。心理的ストレス負荷群は前群の異常な鳴き声、驚愕反応、脱尿などの条件情動刺激を受ける(電撃の負荷はなし)。

粗サポニン成分は身体的ストレス負荷時よりも心理的ストレス負荷時において抑制効果を強く発現する結果が得られた。粗サポニン分画投与群の胃粘膜損傷治癒過程を内視鏡で観察した結果、明らかに治癒を促進していた。この抗潰瘍作用にも不安や恐怖を軽減するような向精神作用が関与している可能性が推察される。

9.ストレスによる免疫機能修飾の神経・内分泌機構と薬用人参の作用

〈北海道大学獣医学部家畜生化学講座 斉藤昌之 No.16,68〉

新しい免疫抑制モデルを確立した。電撃ストレスによるリンパ球機能の抑制はVHM(視床下部腹内側核ー交感神経の中枢)-交感神経を介して起こることを示した(今までは主に副腎皮質ホルモンの作用によると考えられてきたが、免疫機能が交感神経によって直接制御されうることが確実となりつつある)。尚、ストレスによる免疫抑制はリンパ球幼弱化反応の低下、インターフェロン産生活性の低下、NK活性の低下、ヒツジ赤血球抗原に対する抗体産生能の低下などが指標とされている。

10.ストレスによる免疫機能抑制の神経・内分泌機構と薬用人参の作用

〈北海道大学獣医学部家畜生化学講座 斉藤昌之 No.18,67〉

VHMを刺激すると脾臓交感神経の活性化によって脾リンパ球機能の抑制が起こることを見出している。今回、電撃ストレスによる脾リンパ球の幼弱化反応とNK活性を指標として紅参の効果を検討した。紅参末を飼料に0.2%および1.0%混入したものをラットに2ヵ月間自由に摂取させた。その後電撃ショック(Foot Shok)を与えたが、免疫抑制が紅参末の用量依存的に解消されることが判明。

11.薬用人参成分の抗不安作用に関する行動薬理学的研究

〈愛媛大学医学部 吉村裕之 No.18,75〉

二つの実験系で抗不安作用を測定した。一つは給水時に電撃を受け、何回給水するかを測る系と二つ目は床上45cmの高さにクローズドアームとオープンアームを交差させ、各アームへの移動回数と時間を測る系で粗サポニン分画と非粗サポニン分画及びRb1、Rg1の抗不安作用を測定した結果、粗サポニン分画とRb1が抗不安作用を示したことから、ジンセノサイドRb1が抗不安作用の中心であろう。

12.ストレスによる免疫機能抑制に対する薬用人参の効果

〈北海道大学獣医学部家畜生化学講座 斉藤昌之 No.20,55〉

市販の固形飼料に紅参末を1%添加し、8週間与えたところ、電撃の作用(Foot shok)が用量依存的に解除された。次にRb1、Rg1 1mg/kg腹腔内投与で効果を調べたが、いずれも効果はあった。但し、サポニン20mg/kg腹腔内投与は明らかに過大量であった。

13.コウジン末の向精神作用に関する行動薬理学的研究

〈愛媛大学 吉村裕之 No.20,92〉

紅参末を実験動物に経口投与した場合の薬効評価を試みた。薬効評価は高架型十字迷路法と明暗選択法にて抗不安作用を検討した。紅参末600mg/kgを経口投与(水性懸濁液として投与)後から高架型十字迷路法により抗不安作用発現までの時間を検討したところ、60分後、および120分後の群において対照群との間に有意差が認められた。明暗選択法では紅参末300mg/kgの経口投与で効果があった。紅参末が不安神経症や抑うつ状態、不眠などに臨床適応されていることと傾向が一致する。

14.ストレスによる免疫機能抑制に対する薬用人参抽出物の急性効果

〈北海道大学獣医学部家畜生化学講座  斉藤昌之 No.22,16〉

今まで、筆者らはラットを用いて、1)ストレスを与えると脾臓交感神経の活性化と脾リンパ球機能の抑制が起こる。2)脾リンパ球機能の抑制は交感神経節遮断薬や脾臓交感神経の外科的切除によって消失する。3)紅参添加飼料を8週間与えておくとストレスによる抑制が解除されること。4)粗サポニン分画あるいはジンセノサイドRb1の急性投与によって解除されることを見出し、ストレスが交感神経の活性化を介して免疫機能抑制を起こすが、それに対して紅参が有効であることを示してきた。

本報告の実験結果で紅参末および紅参サポニンが脾臓リンパ球に直接作用して効果を発揮するものではなく、紅参の抗ストレス効果は、より上位の、例えば交感神経の活性化や視床下部をはじめとする脳内ストレス応答機構のレベルでの作用に基づいていると予想できた。

15・反復拘束ストレスのホメオスタシス破綻に対する紅参慢性経口投与の改善作用

〈大分医科大学 坂田利家 No.28,91〉

反復拘束負荷によって誘発されるラットの鬱病モデルを用いて実験を行った。コウジン末投与群は10%コウジン末含有飼料で実験開始前7日間と開始後7日間の計14日間飼育する。対照は普通飼料で飼育。反復拘束負荷は13時から17時の4時間金網ケージに強制拘束を7日間施行した。測定項目は摂食行動やホルモン量などである。結果はコウジン末摂取群で拘束負荷による摂食抑制作用が明らかに軽減された。

今回の実験で得られた知見によると、コウジン末の経口的慢性投与によって抗ストレス作用が発現する薬理学的機序はコウジンがヒスタミン神経系の賦活化を誘導することで慢性的なストレス環境への適応が促進され、生体の恒常性維持機構を補完すると考えられる。つまり、コウジンの慢性投与は脳内ヒスタミン神経系を賦活化する作用があり、慢性的なヒスタミン神経系の機能不全を示す病態にとっては、その改善効果は顕著であり、有用であると結論された。

16.ストレス耐性獲得を促進する紅参の慢性経口投与

〈大分医科大学医学部第一内科 坂田利家 No.29,58〉

全身性炎症反応症候群(SIRS)つまり、局所の炎症が全身性の炎症反応を引き起こす反応をいうが、これに対し、コウジン末の慢性経口投与がどのような効果を発揮するのか、観察した。敗血症モデル動物は大腸菌菌体成分であるリポポリサッカライド(LPS)を腹腔内反復投与によって作成した。コウジン末投与群は1%コウジン末含有飼料で実験開始前後7日間計14日間に渡って飼育した。

結果はLPSの反復投与による敗血症モデル動物でも反復拘束負荷モデル動物同様、コウジン末の慢性経口投与が食行動抑制等のSIRS類似反応を有意に緩和することが確認された。またLPSの反復投与および反復拘束負荷により学習能力は低下するが、コウジン末の慢性経口投与は獲得された学習の保持を促進することも確認された。紅参の作用点は視床下部ヒスタミン神経系の賦活化を介した、海馬を内包する生体の恒常性維持の中枢性制御機能促進にあることを示唆する。

人臨床試験

1.寒冷負荷ストレス下の健常人に及ぼすコウジン末大量投与の急性効果について

〈松山紅参研究会 金子仁 No.22,20〉

健康な成人に紅参末4.5gまたはニフェジピン(血管拡張薬、Ca拮抗薬)20mgを投与し、寒冷負荷ストレスに対する効果を見た。氷水に手を浸漬できる時間と血圧、心拍数を測定した結果、紅参の血流改善作用により、浸漬時間は大幅に増加したが、血圧や心拍数はプラセボの場合と大差なかった。負荷形態が異なるとストレス抑制力が異なるのかもしれない。

2.コウジン末の抗ストレス作用についての研究(第1報)

〈浜松医科大学保健管理センター(心療内科) 永田勝太郎 No.22,25〉

人に対する抗ストレス効果を客観的に評価するため、尿中副腎皮質ホルモン17-KS-S(ストレスに抗する生体の予備力-大きいほど良)と17-OHCS(生体がさらされているストレスの強さ-小さいほど良)の比(S/OHと略)を測定した。心療内科外来を受診した女性24例を2群に分け、1群(ストレスの強い群)にコウジン末3.0gを2週間投与し、投与前後のS/OHを測定した結果、有意にS/OHを改善した。尚、ストレス状態とS/OHは有意の相関性がある。

3.ヒト・ストレス状態に対する紅参の効果(第2報)

〈浜松医科大学保健管理センター(心療内科) 永田勝太郎 No.24,125〉

予後不良のがん患者11例に補剤(コウジン末3.0g/日+十全大補湯7.5g/日)を経口投与しS、OH、S/OHを投与前後に測定した結果、治療3ヵ月後の比較ではSの上昇、OH上昇の緩和、S/OHの上昇の緩和化が観察され、延命とQOLの向上(特に食欲)が同時に得られた。

4.卵巣癌術後化学療法施行患者と重症更年期障害患者の神経内分泌免疫系に及ぼす紅参の効果

〈防衛医科大学校産婦人科 戸出健彦 No.25,101〉
抗ストレス作用を中心に

進行卵巣癌術後化学療法施行患者(A群)7例に対し、化学療法施行1日目より2週間にわたり紅参(6g/日)を投与した。重度更年期障害患者(B群)12例に対し、30日間、紅参(6g/日)を投与してそれぞれ投与前後の数値を比較して下表の結果を得た。

精神身体的症状を改善し、血中DHEA-Sおよびコルチゾールと密接に関連するのみならず、著明な免疫賦活作用を持つ紅参は、神経内分泌免疫系に直接的に働きかけ、抗ストレス作用を発現する。

5.老人病院における看護者・介護者の作業ストレスに及ぼすコウジン末の影響について

〈金子循環器科内科 金子仁 No.25,107〉

老人病院に勤務する看護婦・ヘルパー計28名を対象に2群に分け、二重盲検法により検討した。コウジン末4.5g服用後3時間作業し1時間の休息後再び薬剤(プラセボ)を服用し3時間作業した。各工程で調査・測定を行った。もう一つの群はプラセボを先に服用し、コウジン末を後に服用した。

疲労自覚症状の訴え率から、眠気とだるさおよび注意集中の困難、全体の疲労度はプラセボより優っていたが、局在した身体違和感は改善しなかった。作業後の体調は快調にシフトした。作業後のPRP(収縮期血圧*脈拍数)は有意に減少し、心筋酸素消費量の節約を示唆した。作業後のフリッカー値はコウジン投与期や休息期には増加し、プラセボでは減少した。以上の結果から、コウジン末は中枢性疲労に有効であることは確かである。生体にかかるストレスに対するコウジン末の効果は、加えられる負荷形態の違いや年齢・代謝状態に応じた調整的・復元的な作用であって、このような作用は主として自律神経・内分泌系の安定によってもたらされるものと推測された。

6.コウジン末長期投与の作業ストレスおよび生理機能におよぼす影響について

〈金子循環器科内科 金子仁 No.28,61〉
ーある老人病院における調査ー

老人病院に勤務する29人を対象に二重盲検交差法にて試験した。前半9週間は1日2回朝食前と寝る前にコウジン末3gを1日計6gを経口投与し、後半9週間を同様にプラセボを投与した。1群を夏から秋、2群を秋から冬に試験を実施した。結果は「眠気、だるさ」、「注意集中の困難」、「局在する身体違和感」、「自覚症状の総括」いずれもコウジン末服用期間でプラセボより改善されていた。

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