高麗人参の分析について(3)~行って帰って分析してまた行って~

2014 年 8 月 20 日

主席研究員 理学博士 三原

 

前回は、「ものさし合わせ」の話をしました。
エキス製造などでは分析値を見ながら加工調整をする必要があるため、委託先の会社様で分析を行いますが、その数値は弊社の数値と一致しなければならないという話でした。

 

 

エキス製造、特にエキス熟成工程では、ジンセノサイドが吸収されやすい形(いわゆるプレミアムジンセノサイド)へ徐々に変化して、プレミアムジンセノサイドが一定規格の範囲に入ったのを確認した後、熟成をストップさせます。このため、一定時間ごとにジンセノサイドをリアルタイムで分析する必要があります。
ジンセノサイドを分析できて、「ものさし合わせ」ができているのなら、熟成加工の調整は基本的に委託先様にお任せです。

 

 

しかし、開発途中の商品製造で、委託先の会社様が分析できるような環境ではない場合、熟成をいつストップしたらよいか分かりません。どうしたらよいのでしょう?

 

 

私共の会社で分析するしかありません。しかも、ほぼリアルタイムで。

 

 

一定時間ごとにサンプリングしたエキスを委託先様まで取りに行き、自社に持ち帰って分析するのです。

 

 

先日は、この「行く→持ち帰る→サンプル測定」を3日間繰り返しました。
近所なら気軽にできるのですが、今回の委託先様へは途中新幹線を利用して往復4時間程度。帰ってから分析するので一日仕事(三日仕事?)でした。
一日の流れは以下のような感じです。

 

 

朝、自宅から直行で委託先様へ向かう

10時頃 委託先様でサンプリング品(前日の昼にサンプリングしたエキス少量と、同じく夕方の分と当日朝の分)を頂戴する。早く帰りたいので先方の担当者とは少し立ち話をする程度。

すぐさま引き返し、自社に持ち帰る(道中でその土地名物のスタミナたっぷりのごはんを食べたいところですが、分析サンプルの入ったクーラーボックスを持っていますし、早く帰って分析するため、ガマンガマン。)

12時頃 帰社後、分析装置を立ち上げつつ、サンプリング品の前処理を行う(移動疲れは多少あるものの、気合で分析開始。)

15時頃 分析装置にて測定開始。

18時頃 分析完了。得られた数値を解析し、加工の判断する(一日の疲れがたまった状態ですが、判断は冷静に。)

 

 

分析している間にも製造中のエキスの熟成は進むので、持ち帰りから分析終了までの時間を短縮して、なるべくリアルタイムに近い状況で分析値を出していくことが必要なのです。

 

 

分析としては、熟成時に減っていくジンセノサイドと、熟成時に増えてくるジンセノサイドの両方を分析して、時間を横軸に、分析値を縦軸にとったグラフを描きます。そして、それぞれの分析値が、いつ、規格値の範囲内に入ってくるかを毎日予測します。

 

 

プレミアムジンセノサイドの規格値の範囲はそれほど広くはないため、予測を誤ると範囲外になってしまいます。慎重かつ迅速な判断が必要となり、腕の見せ所です。

 

今回は、1日目は熟成が始まったばかりで、予測も大まかでしたが、2日目の分析結果で熟成終了時間をほぼ予測できて、熟成終了時間を委託先様に指示し、3日目の分析で、最終的に一定規格のエキスを製造されたのを確認できました。

 

 

移動した後に分析を実施、しかもどちらもできるだけ早く、当日中に、というのはやはり少々ハードで、さすがに3日目になると疲れを感じましたが、高麗紅参エキスを多めに飲んで何とか乗り切りました。

 

 

開発途中の製造で一定品質の製品を作るためには、このような身体を張ったことも行っていますが、今回、一定規格のエキスを製造できたのも、無事に移動できたおかげと、製造途中の決まった時間にサンプリングしてくれる委託先企業様のご協力のおかげ。本当に感謝です。

 

 

ちなみにこの3日間が終わった後のビールは格別に美味しかったです。

 

以上