ジンセノサイドは合成できないのか?(2)

2014 年 7 月 30 日

研究開発室 中村

 

研究開発室の中村です。
私は、大学で有機合成をずっと行っていたので合成には関心が高く、「ジンセノサイドは合成できないのか」と思い、論文検索サイトで論文を探しています。
(合成ジンセノサイドを食品に使用することはできませんが・・・)

 

前回、合成法で特許取得している一例として、株式会社ネオスのRh2製造方法を挙げていました。
今回は、この製造方法を簡単に紹介したいと思います。

 

5段階反応で成り立っており、大きな構造のシラカンバ含有ペルテンを出発にしています。
まず、テルペン内の一部のヒドロキシル基を酸化させ、次に別のヒドロキシル基をアセチル化、そして酸化させた部位を還元、その部位にグルコース誘導体を導入、最後に還元してRh2にしています。※(1)

 

ジンセノサイド構造のイメージが難しいと思いますが、5回反応させることにより目的物質を得ることができています。

 

この特許で感じたことは、実験室では簡単にできても、工業的に合成するのは難しいということです。

 

工業化が難しい理由は、出発物質をシラカンバ葉から抽出して使用していることにあります。
採取した葉20 kgから抽出できる出発物質は、わずか50 gです。※(2)

 

かなり少ないと感じられるでしょうが、天然の葉から目的物質を取り出だそうとした場合、大量の葉から少量しか取り出すことができません。
エッセンシャルオイル(精油)がよい例です。大量の葉や花、樹皮、樹脂などから抽出できる量はごくわずかです。

 

具体的には、1000 g (1 kg)から1 g抽出できるかできないかくらいの量です。
しかも、一度に1 g抽出することはできないので、何度も繰り返し抽出しなければならず、手間がかかり高価なものになってしまいます。

 

脱線してしまいましたが、実験室で合成するには50 gで十分だと思います。
先ほどのRh2製造方法では、出発物質30 mgで5段階反応を終了させています。
しかし、合成することは簡単でも、大量合成となると話は変わってくると感じています。

 

この特許で感じたことはもう一つあり、それは各段階の収率が高いということです。
一段階平均で90%という高い収率は、反応方法を工夫しなければ得ることはできません。

 

「すごいことだなぁ」と思いながら特許資料を読んでいました。

 

ジンセノサイドの合成において、テルペンを出発物質としている文献が多く、テルペンより小さな構造を持つ化合物から合成している文献は現在見つけることができていません。

 

「テルペンより小さい構造からの合成はできないのか?」という疑問があるので、出発物質がテルペンではない構造から合成する論文を探し、見つけたときにはご報告したいと思っています。

 

さて、今回はここまで。
次回は、異なる文献の内容をもっとわかりやすく紹介します。

 

※(1)株式会社ネオス,日本国特許,特公平8-208688.
※(2) 柴田承二 他,生薬学雑誌1964 (18),27.

以上