「からだ」ってスゴい(三)

2014 年 11 月 19 日

研究開発室 徳田

 

研究開発室の徳田英昭です。
今回もよろしくお願いします。

 

11月に入り、京都では気温もぐっと下がり、街の木々も色づきはじめました。
今年は深まる秋を楽しめるのでしょうか。
いっきに冬がやってきて、あっという間に枯葉だらけにならないことを祈っています。

 

さて、“○○の秋”といいますが、今回は“食欲の秋”にちなんで、ヒトの腸内でスゴい働きをしている“腸内細菌”の話をしたいと思います。

 

ヒトのからだは、自分以外のものが入ってくると、免疫機能によって処理し、体外に「排出するしくみ」を持っています。

 

しかし、ある種の細菌については、うまく腸内に住まわせて協力関係を築き、その働きをうまく利用できるように「共生するしくみ」を築いています。

 

からだって、スゴいですね。

 

ひと言で“腸内細菌”といいますが、一般的な大人の腸には、およそ300種類以上、100兆個以上もの細菌が住んでいて、その重さは1kgにもなるといわれています。

 

ヒトって、母の胎内にいるときは、母親に守られているために細菌と出会うことがないので、腸内細菌はいないらしいです。

 

産まれてきて初めて細菌にふれ、また母親の母乳からもらったりして、腸内細菌を獲得していきます。

 

そして、腸内細菌との共同生活を始めることになります。

 

したがって、成長していく環境によって獲得する菌の種類が違ったり、生活習慣によって変化する腸内環境によって増える菌が違ったりしますので、一人ひとりの持つ腸内細菌は、種類も量もかなり違うようです。

 

また、腸内細菌は、便の半分を占めるともいわれ、腸内でどんどん増えて、いっぱい働いて、どんどん体外に排泄されています。

 

多くの種類がある腸内細菌ですが、ヒトへの作用でグループ分けしますと、いわゆる“善玉菌”、“悪玉菌”、そして“日和見菌”(便宜上、こう呼んでいる)の3つに分けられます。

 

“善玉菌”の代表はビフィズス菌などの乳酸菌です。
ヒトが食べた食物繊維を発酵させ、乳酸などの有機酸を生成したり、ビタミンやアミノ酸を生成したりします。
その結果、悪玉菌が増えるのを防いだり、腸の働きを良くしたり、さらには免疫力を高めたりして、ヒトの健康に役立ちます。

 

一方、“悪玉菌”の代表はウエルシュ菌でしょうか。
そのほか、大腸菌やブドウ球菌などが知られています。
こちらは、ヒトが食べたタンパク質や脂肪を分解して、アンモニアなどの有害物質を生成し、腸内環境を悪化させます。
それによって老化が早まったり、病気にかかりやすくなったりします。

 

そして日和見菌は、腸内の状態によって有益な働きをしたり、有害な働きをしたり、なんとも無害だったりするようです。

 

ここで勘違いしてはいけないのが、悪玉菌を追い出し、すべて善玉菌にしようとしてはいけないということです。

 

悪玉菌は、からだにとって悪いことばかりをしているのではなく、共存できない細菌が侵入してきたときに戦うなど、状況によってはからだに良いこともしているからです。

 

善玉菌も同じで、状況によって有害物質を生成することもあります。

したがって、悪玉菌が増えすぎないようにして、善玉菌・悪玉菌それぞれがバランスよく働き、からだにとって良い作用をするように、腸内環境を保つことが大切になってきます。

 

それでは、腸内環境をよい状態に保つためにはどうすればよいのでしょうか。
まずは、腸内環境が悪化する原因をみてみましょう。

 

腸内環境の悪化の原因は、加齢、ストレス、不規則な生活、欧米型の食生活などがあります。
なかでも食事は、腸の中を通過し、直接、腸内細菌と関係することから、大きな影響があると考えられます。

 

高タンパク・高脂肪・低食物繊維の欧米型食事は、日本人の腸内環境には向きません。
悪玉菌がこれらをエサにしてどんどん増えることになり、これらタンパク質や脂肪を分解して有害物質を多く生成し、腸内環境を悪化させます。

 

一方、食物繊維の豊富な食事は、善玉菌をどんどん増やし、腸内環境をよくします。

 

したがって、高タンパク・高脂肪の肉や牛乳などを減らし、野菜料理に漬物や納豆などの発酵食品を加えた伝統的な日本食にすれば、腸内細菌のバランスはよくなり、腸内環境をよい状態に維持することができるのです。

 

本来、からだが備えている、腸内細菌との協力体制は、日頃の生活習慣に少し気をつけるだけで、すばらしい働きをして、私たちを健康にしてくれそうです。

 

最後に、高麗人参には胃腸の調子をととのえる作用とともに、善玉菌を増やす働きがあるといわれていますので、腸内環境の改善の助けになるものと思われます。

 

また、腸内細菌は、高麗人参の作用にも大きく関連していることが分かっています。このあたりのことは、またの機会にお話しできればと思います。

 

腸の働きのパートナーである腸内細菌のことも少し気にかけながら、おいしい秋の食材を楽しみたいものです。

 

それでは、今回はここまでとさせていただきます。